前回の記事では短納期がなぜ発生するのかについて紹介しました。
なぜ、あの時顧客は急に怒り出したのか? その『裏事情』を知るだけで、今日の対応の成功率は変わります。まだの方は先にこちらをチェックしてください。


今回はより踏み込んでどういう対応が必要かを詳細に書いていきたいと思います。
STEP① 状況整理
まずは短納期手配という現実を冷静に受け止めましょう。
そしてしっかりと状況を整理します。
- どんな背景の短納期なのか?
- 緊急度合いはどれくらいか?
- 自分一人で処理が可能か?
焦って内容を把握せずメーカーに調整依頼をしても何も伝わらず、余計なキャッチボールが増えます。
まずは今起きている事実に対してしっかりと向き合い状況を整理する。
logipapa至急で納期調整をお願いします。
顧客から短納期手配(急激な前倒し)依頼がありました。



○○様短納期(急遽前倒し)なのはわかりますが、なぜそうなったのか背景を教えてください。
何もなく客が必要。だけでは調整は出来ません。
こんなやりとりに時間を割くのではなく、内容を精査して1回の連絡で伝える。これが大事です。
全ては状況整理から始まります。
STEP② 各対応について
ここからはこの記事の一番大切な調整についての対応を解説していきます。
手順① 顧客に状況確認
最初におこなうのは顧客への状況確認です。
- 短納期になる背景
- 温度感の確認
- 実際に必要な日(デッドライン)の確認
- 全数納入できない場合の分納について
- 納品できない場合の代替製品の採用可否
- 調整できない場合どうなるか?
1 短納期になる背景
これは以前に書いた記事でも書いていますが、どのような理由で今回の短納期になったのかを確認してください。
依頼をする側のあなたが短納期の背景を知らず依頼をするのは、打席にバットを持たず行くに等しい行為です。
必ず背景を確認し、自分事に落とし込みを行ってください。
2 温度感の確認
次は顧客の温度感を確認してください。
- どれくらいの緊急度合いなのか?
- 今すぐにでもE/Uが乗り込んでくるのか?
- メールでは厳しいことを書いているけど実際は余白があるのか?
状況の逼迫度合いで次の行動の指針になります。
3 実際に必要な日(デッドライン)の確認
メールや電話で記載されている必要日を鵜呑みにしないでください。
ここで書かれている日程は顧客も多少の余裕を見ています。
それは顧客にも生産の都合がある為です。
製品入荷
↓
生産ライン投入
↓
生産
↓
梱包・出荷
部品が顧客に入荷されたとしてもこれだけの工程があります。
ですので顧客としても本当に必要な日程にプラスして1週間~2週間程度の幅を持たせています。
調整が出来るめどがついている案件であれば、そこまで気にする必要はありませんが、
調整できるか同課の瀬戸際案件ではこの顧客のバッファが生死を分けます。
このやり取りは顧客側もあまり公にしたくない部分ですので、電話や可能であれば直接訪問し
本当の必要日=デッドラインを確認してください。
4 全数納入できない場合の分納について
調整によっては顧客希望数の半分なら調整が出来る場合があります。
その場合の分納の対応確認、そして分納した場合のデッドラインがどれくらい伸びるのか?
一度に納入できなくても、少しでも納入できれば風向きが変わることがあるので、必ず確認してください。
5 納品できない場合の代替製品の採用可否
部品のカテゴリやメーカーの状況によっては調整が難しい製品もあります。
すべてを調整出来れば良いですが、現実的にそれは難しいと理解してください。
そこで次善の策として調整できない場合の代替製品の採用可否を確認してください。
- 類似特性品なら使えるのか?
- アップグレード品は使えるのか?
この辺りを最初に聞いておくと、調整が難しい場合の次善の対応も行えます。
6 調整できない場合どうなるか?
自分たちに費用請求が来るのか?
顧客として大きく業績に影響するのか?
調整できない場合どうなるのかはしっかり確認しましょう。
手順② 社内への情報共有
顧客に状況を確認したら次は社内への情報共有です。
あなたの業務範囲で調整できるのであれば、上司への共有は最低限で構いません。
ですが、状況を確認した段階で
(これは自分だけでは難しいぞ)と感じた場合は、
ただ情報を共有するだけでは不十分です。
先ほど確認した内容を詳細にフィードバックし指示を仰ぐ又は上司にやってほしい事を依頼する。
ここの初動対応を間違い、自分で手に負えない案件を一人で動いて結果が出ず、時間だけが経過。
顧客から上司に連絡が入ればより一層大事になります。
上司としても切羽詰まった段階ではやれる打ち手は限られてしまいます。
そうならない為に最初の段階での情報共有は大切です。
あなたが若手社員でどうしていいか分からない時は、とにかく上司にこれだけは伝えてください
- 状況を詳細に伝える
- どうしていいか分からないと素直になって指示を仰ぐ
最初は分からなくて当たり前です。
案件をこなしていくうちにその経験が血となり肉となります。
手順③ 社内で処理できないか確認
社内への情報共有が終われば、メーカーへの依頼!と思いがちです。
ですがここで視野を広げます。
それが「社内で処理できないか」の確認です。
- 他の顧客で入荷済みの製品が無いか?
- 他の顧客で入荷予定の製品が無いか?
- 他営業マンの顧客で借りることが出来ないか?
メーカーへの依頼ではなく社内で処理する事が出来ればそれに越したことはないですよね?
あなたの会社にもシステムがあって、引当状況などが見れると思います。
あなたの顧客が必要な納期:4月1日(入荷予定日5月1日)
他の顧客が必要な納期:5月20日(既に入荷済み)
このパターンなら他の顧客の担当があなたであれば自分の担当顧客での調整。
他の営業であれば事情を説明して先に入荷しているものを借りる。
これで顧客の要望を叶えることが出来て、他の顧客にも迷惑をかけません。
手順④ メーカーへ調整依頼
社内も確認したが、借りれそうな顧客もいない・・・
いよいよメーカーへの調整依頼です。
ここでのやり方を間違えると、メーカーの信頼を失うことになります。
少しメーカー視点の話をします。
メーカーからしても短納期手配(急激な前倒し)はあなたが思っているより労力がかかります。
基本的にメーカーの生産はオートメーション化されています。
短納期にしても、急激な前倒しにしても
このオートメーション化の中に手動で割込んで生産をしてもらう事になります。
じゃあどうやって割り込んでもらうか?そういう視点で考えることが大切になってきます。
つまりはメーカーに「社内を説得する大義名分」となる情報を提供する事です。
大義名分と書いていますがそこまで大それた情報が必要ではありません。
これまで書いてきた手順で得た情報を簡潔にまとめて伝えるだけです。
- なぜ短納期(急激な前倒し)となったのか(背景を簡潔に伝える)
- 希望日(顧客への納品を考えて、1~3日は余裕を見て伝える。顧客に分納OKがとれていたら分納可を伝える)
- 温度感(顧客の切迫具合をしっかり伝えて優先順位を上げてもらう)
- 調整できない場合の事を伝える(これはメールだと角が立つので電話がおすすめ)
- あなたのお願いしますという気持ち(これも電話がおすすめ)
このポイントを守ってメーカーへメールを送ります。そしてメール送信5分後くらいに電話をします。
〇〇株式会社
〇〇様
いつもお世話になっております。〇〇の○○です。
下記製品につきまして、新規手配での短納期対応が可能かご相談させてください。
■対象製品:〇〇(品番)
■数量:〇〇
■希望納期:〇月〇日
■理由:あなたが確認した内容(遅延不可案件)
現状、通常LTでは間に合わず、大変厳しい状況です。
誠に恐縮ですが、前倒し対応や他ロットからの融通、分納など
対応可能な選択肢があればご提案いただけますと幸いです。
また、代替品やスペック緩和で対応可能な場合もご教示ください。
お手数をおかけしますが、何卒ご確認のほどよろしくお願いいたします。
〇〇株式会社
〇〇様
いつもお世話になっております。〇〇の○○です。
既にご手配いただいております下記案件につきまして、
顧客都合により納期前倒しの要請があり、ご相談させてください。
■品番:〇〇
■数量:〇〇
■現行納期:〇月〇日
■希望納期:〇月〇日
■背景:あなたが確認した内容
直前のご相談となり大変恐縮ですが、
前倒し対応の可否についてご確認いただけますでしょうか。
また、全数が難しい場合は、
一部前倒し(分納)や他ロットからの振替など、
対応可能な方法があればご提案いただけますと幸いです。
ご負担をおかけするお願いで恐縮ですが、
何卒よろしくお願いいたします。
ポイント
大事なのは長文になりすぎないという事です。
長々と長文を書くと、何を一番伝えたいかがぼやけます。
詳細は後ほどの電話でフォローするので問題ないです。
先ほども書きました多、メーカーからすれば「自分たちに非が無い」ことに対するアクションです。
- 顧客が言っているから
- 必要だから
- 何とかして
- 希望納期と数量だけ書く
これは確実にやってもらえないNGパターンですので絶対にやめてください。
メールを送った後にあなたの熱い気持ちを電話で伝えてください。
メールでは誤解されるような内容でも電話を使えば、
感情をダイレクトに伝えることが出来ます。
まとめ|納期調整は「信頼の貯金」をどう使うかの勝負
納期調整は、単なる事務作業ではありません。それは、あなたが日頃からメーカーや顧客と築いてきた「信頼の貯金」をどう使うかという、極めてクリエイティブな仕事です。
- 「誠実な情報」が最強の武器: メーカーに「なぜ急ぎなのか」の背景を正しく伝える。この小さな誠実さが、いざという時の「協力」を引き出します。
- 「できない」を伝えるのもプロ: 無理なものは無理と、根拠を持って伝える。これもまた、嘘をつかない営業として顧客を守るための大切なスキルです。
- 孤独にならない: 短納期は構造上の問題であり、あなたの責任ではありません。一人で抱え込まず、メーカーを味方につけ、チームで解決を目指しましょう。
納期トラブルを乗り越えるたびに、あなたの「営業としての地平」は確実に広がっていきます。パニックにならず、まずは一本の電話から始めてみましょう。

コメント