「会社のメリットを提示しただけなのに」
強みを前面に出した見積は顧客の信頼を失わせるには十分でした。
今回の見積は商社営業が必ず使用するであろう「在庫を活かした見積」が招く失敗です。
在庫販売は利益を生み出す
商社の最大の特徴といえる「在庫運用」。製品を大量に仕入れることで購入数量UPによる仕入価格の原価ダウン&即納対応。
一見メリットだらけに見える在庫を活用した見積ですが、その使い方を間違えてしまうと、最悪の事態を招きます。
今回依頼をくれた顧客の見積はまさに在庫を活かせる。そんな見積依頼でした。
自社の在庫に依頼に近い製品がある。これは在庫を活用し、双方にメリットを出せるはずだ。そう思っていました。
価格・納期メリット提示も
顧客には見積返答段階で自社在庫製品を前面に押し出す見積を作成しました。
価格についても在庫に誘導する為に、顧客からの依頼品を少し利益を厚く、在庫品は原価が低いのでそれなりの利益を乗せても相対的に安く見える→在庫製品を販売する。そういう狙いがありました。
そして見積返信後顧客からTELがかかってきました。
顧客〇〇さん。見積ありがとうございます。今回そちらの在庫品も見積してくれたんですね。



〇〇様。ご連絡ありがとうございます。そうなんですよ。うちで在庫しているので、価格も納期もご依頼品よりメリットが出せるのでおすすめです!
私は自信満々に会話をしていました。その後の展開の予想もできずに。



う〜ん。〇〇さんの在庫を売りたいって気持ちはわかるんですけど、どうしても私が依頼している製品の見積単価が高すぎるように感じるんですよね?この2つの製品ってほぼ同じ特性で差がないのにここまでの差が出るのはあまりにも不自然じゃないかな?
策士策に溺れるとはこのことですよね。あっさりと私の作戦は相手担当者に見抜かれていました。
素直に在庫品を買ってもらいたい。と素直に言うことができればまだその後の展開も変わったかもしれません。



〇〇様、確かにそう見えるかもしれませんが、ご依頼品の価格帯も、おおよそ提示している単価が平均ではないかと思います。。
正直苦し紛れの言い訳です。自分で利益を乗せている自覚があるので、言葉に魂がありません。



〇〇さん。ここまで言うつもりはなかったけど、他の商社での回答単価からみるとかなり高いですよ?
当然各社見積に正解はないでしょうけど、すぐにバレるような嘘はよくないな。
とりあえずいただいた見積で検討しますね。
「ありがとうございました」と言う資格が、自分にない気がしました。
その数分後、
酸素ボンベの中身がなくなるような感覚に襲われました。自分の浅はかな言い訳がこれまでの信頼を崩している。
そんな感覚です。
自分都合を押し付けた代償
それから何日かが経過し、案件進捗確認のため顧客を訪問しました。
結果はもちろん他社で当初の依頼品を購入することに決めたと。
わかっていた事ですが、改めてその事実と向き合うのは非常に苦しい気持ちでした。
- 普通に見積を返していれば受注できたのでは?
- 素直に在庫品を買って欲しくて高くしてしまっていたと言っていたら?
- 無理やりではなく、「在庫もありますよ」くらいの優しい提示なら?
顧客と面談している中でもそんなことばかり考えていました。
ですが、この案件については自分の判断ミスで失注という結果になったことは事実です。
まとめ|自分都合を押し付けない
今回の失敗の原因を分析しました。
- 在庫を売りたいという「自分都合」の価格提示
- 図星を言われたことで取り繕うための「言い訳」
- 素直に「謝罪」できない心の弱さ
この顧客とは今もお付き合いは続いています。この見積のやり取り以降は仮に在庫品を薦める場合でも細心の注意を払っています。
今回は価格の面での指摘ですが、スペックが類似だからとゴリ押ししているのも間違っています。
相手の都合を確認しない「自分都合」な見積は顧客に見透かされて信頼を失います。
在庫提案をするときの3原則
・依頼品を正当価格で出す
・在庫品は“選択肢”にする
・価格差の理由を説明できるか確認
私は、まだ直接言ってもらえただけマシなのかもしれません。
見積は数字ではなく、信頼を提示している。
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