顧客が豹変する理由。それは「社内の恐怖」から。
だからこそ営業は、
“敵として戦う”のではなく“味方として支える”動きが必要になります。
これまで納期トラブルシリーズを2本書いてきましたが、営業視点だけでなく顧客目線での納期トラブルについても書いてみようと思います。
両方の視点を知ることは営業としての幅が出ると思いますのでぜひお読みいただければと思います。
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短納期トラブル時に顧客が厳しくなる理由
顧客が豹変する理由。それは「社内の恐怖」です。
見積遅延と同様、納期トラブルでも本質は同じです。
顧客は「遅れている事実」に怒っているのではありません。
社内で説明できないことに追い詰められているのです。
なぜ納期対応は最初から詰んでいるのか
短納期案件は、実は現場に届いた時点で遅れています。
実際の業務担当者は概ね2つのいずれかの部署に所属しています。
- 購買(仕入れ担当)
- 資材(在庫・供給管理)
この2部署に届くまでに数日は必ず経っています。
ですので発注業務担当も実際はかなり時間のない中からのスタートしているということを認識してください。
発注担当者が背負っている“本当のプレッシャー”
発注担当者は、製造ラインを止めたら「お前の手配ミスだろ」と工場長や役員から罵声を浴びる恐怖と戦っています。
- 工場長
- 役員
- 現場
この圧力の中で仕事をしています。
彼らが営業に強く当たるのは、「自分はこれだけ商社を急かしています」という社内向けのアピール(パフォーマンス)であることも多いのです。
つまり、あなたに強く当たるのは、
感情ではなく“防御行動”です
【重要】あなた以外にも火の粉は飛んでいる
ここで視点を変えてください。
短納期依頼を受けたあなたはこう思いませんか?
- 自分が調整できなかったらどうしよう
- 賠償請求とかされるかも
- 怒られたくないな
私も若手社員時代はこんなことばっかり考えていて、パニックになっていました。
もちろん調整できないと怒られるし、出来ない事を考えると憂鬱です。
ですが、ここで朗報です。
短納期調整依頼はあなた以外にも行われています。
電子部品は一つの部品だけが入荷してもそれだけで製品になる事はありません。
様々な部品の集合体が製品となります。
もし、あなたがある企業の製品における全ての部品を納入していたらこの限りではありませんが、
ほぼ100%製品の一部の部品を納入しているはずです。
ですのであなただけが短納期依頼を受けているのではなく、関連する見えない他の商社にも火の粉は飛んでいます。
顧客が必ず使う“圧力フレーズ”
先ほどの部分でも書きましたが、発注業務担当者は100%部品が揃わない限り安心できません。
99%だからOK。という事はあり得ないのです。
ですので我々商社にはこのフレーズが必ず飛んできます。
メーカー御社以外の部品は全部揃ってるんですよね。
どうでしょうか?
言われた事ないですか?
このフレーズは発注業務担当が我々商社営業を追い詰める呪いのフレーズです。
これは事実とは限りません。
営業を動かすための“圧力ワード”です
ここで焦ると負けです。
短納期時に顧客が取る3つの行動(在庫・相当品・ネット調達)
顧客は感情ではなく「解決」に動きます。
- 他の商社にも在庫確認
- 相当品探し
- ネット商社での在庫購入
手段① 他の商社にも在庫確認
あなたの取り扱っている製品は他の商社でも取り扱いがあれば、在庫確認をします。
どこかで部品が見つかればそれでいい。その可能性があればあらゆる商社に確認をします。
あなたに対する圧力が減った場合はもしかしたら他の商社で部品が見つかったのかもしれません。
手段② 相当品探し
類似特製品で急場を凌ぐという手段もセオリーですね。
特に汎用部品であればこの対応で解決することもあります。
カスタム部品や、特殊な部品であればこの方法は使えないので、かなりの圧力での調整依頼がきます。
手段③ ネット商社での在庫購入
ネット商社はリアルタイムで在庫表示がされているので、どの商社にもない場合の購入先となります。
すぐに購入できることはメリットですが、デメリットもあります。
- 商社購入より価格が高い
- 偽物がないとは言い切れない
- 製造年が古い可能性がある
- 不具合発生時のメーカー解析対応が無い
メリットとデメリットのバランスを天秤にかけて購入するのかしないのか。
スポット購入として割り切るのか。
最終E/Uからのプレッシャーや購入価格などを考慮します。
顧客がネット商社で勝手に買ってしまうと、商社としての売上が消えるだけでなく、
「あの商社は困った時に動いてくれない」という負のレッテルを貼られます。
だからこそ、揃わない時でも「一緒にネット在庫を探してURLを送る」くらいの並走姿勢が、後の大きな受注に繋がります。
ネット商社を使われると何が起きるか
- 売上が消える
- 信頼が落ちる
- 「いざという時に動かない商社」と認識される
顧客の最終手段を使わせないことが重要なポイントになる事がおわかりいただけると思います。
【差がつく】できる営業の動き
優秀な営業はこう動きます。
- ネット在庫を自分から探す(例:大手電子部品ECサイトや海外在庫)を自分から探す
- URLを送る
- 代替案を即提示
顧客を敵とみなすのではなく同じ方向を向く仲間と考える。
これだけで評価は一変します。
納期遅延でクレームを受けたときの対応方法|お詫びと初動が9割
クレームを受けたときにやるべきことはシンプルです。
- まず謝罪(事実ベース)
- すぐに進捗共有
- 今後の見通しを提示
- 言い訳だけ
- 確認しますで終わる
- 納期未定のまま放置
クレーム対応の本質は「安全の再提供」です
それでも揃わない場合
あらゆる手段を講じても部品が揃わないことも当然あります。
その場合顧客内での調整が始まります。
- 営業を通じて納期の延伸交渉
- 他の製品で紐づいている部品を使用できるか確認
ここで重要なのは、
あなたの情報が意思決定の材料になることです。
① 営業を通じて納期の延伸交渉
これは我々が行う交渉と同じだと思ってください。
どれだけ延伸できるかは、部品の揃っている状況次第です。
交渉がしやすいパターン
・すでに全部品の納期回答は出ており、回答自体が交渉できるくらいの遅れの時
・納期回答自体は出ていないが市場購入など揃えられる手段が残っている
交渉しにくいパターン
・全く目処が経っていない部品があり見込みで延伸交渉をする
成功すれば猶予が生まれますが、失敗の場合は苛烈な調整が始まります。
② 他の製品で紐づいている部品を使用できるか確認
これは顧客内の他の製品向けに入荷している部品を緊急で先に使うパターンです。
他の製品の納品までに入荷するのか?
入荷しなくても交渉で延伸できるのか?
商社からの回答や延伸如何により使える使えないの判断が出ます。
そして発注担当者も自分を守るために「誰のせいにするか」を考えます。
戦犯になる営業 / 信頼される営業の違い
- 何も言わない
- 納期不明
- 代替案なし
- 途中経過を出す
- 仮でも納期を出す
- 選択肢を提示する
営業が取るべき短納期トラブル対応3つ
これまでの内容をまとめました。
- 先に“事実ベース”で情報を出す
- 代替案を必ずセットで提示する
- 顧客の“社内説明材料”を作る
① 先に“事実ベース”で情報を出す
納期が確定していなくても、現時点で分かっている情報は必ず共有します。
「回答が遅い」こと自体が、顧客の不信感を増幅させます。
② 代替案を必ずセットで提示する
・相当品の提案
・分納対応
・現実的な納期ラインの提示
「できません」だけではなく、「どうすればできるか」を提示することが重要です。
③ 顧客の“社内説明材料”を作る
顧客は社内で説明するための材料を求めています。
・メーカーからの正式回答
・遅延理由
・今後の見通し
これらを整理して渡すことで、顧客は社内で戦うことができます。
【チェックリスト】納期トラブル時の正しい動き
納期トラブルが発生した時にはこの4つの項目をチェックしてください。
- 現状を説明しているか
- 納期目処を出しているか
- 代替案を提示しているか
- 顧客の期限を確認しているか
よくある質問
- 納期未定でも連絡すべき?
-
必須です。「未定+仮目安」が正解
- 厳しく言われた時どうする?
-
感情で返さず「情報」で返す
まとめ|顧客も社内と戦っている
顧客視点での短納期について如何でしたか?
自分で書いていて思いましたが、顧客も私たちと同じく戦っている。
顧客も必ずしも調整ができるとは思っていない。だからこそ戦う為の大義名分を求めている。
あなたがその大義名分を渡す事で顧客からの信頼は一気に増し売上につながる扉を開く事ができるかもしれません。
だからこそ営業は、
- 情報を渡す
- 選択肢を出す
- 味方になる
これだけでOK。
これができれば、クレームは信頼に変わります。
筆者について
電子部品業界で10年以上の営業経験。
電子部品商社で営業として勤務。
短納期対応・納期トラブルを多数経験。
現場で実際に使っている実務ベースのノウハウを発信しています。

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