見積は出している。
価格も下げている。
それでも受注できない。
相見積もりで最後に価格だけ聞かれて終わる——そんな経験はありませんか?
「もっと安くすれば決まるのか?」
そう思っていませんか?
相見積もりで勝てないと感じる場合、その多くは、
すでに“価格でしか評価されない状態”に入っています。
つまり、営業の努力以前に
勝負のルールが決まっているということです。
この記事では、
- なぜ価格競争が起きるのか
- 営業ではどうにもならない案件の特徴
- それでも勝つための現実的な戦い方
- そもそも価格競争に入らないための動き
を、現場ベースで解説します。
見積を出しているのに受注できない原因は、価格だけではありません。
そもそも営業のどの段階で止まっているのかを整理したい方は、こちらの記事も参考になります。

価格競争になる案件の特徴と条件
価格競争が起きるのは偶然ではありません。
特定の条件が揃った時に発生します。
代表的なものを4つ紹介します。
① 仕様・図面が完全に固まっている
案件として既に終盤に差し掛かっており、変更が利かない状況で発生します。
この状態では、
- 変更余地なし
- 代替提案も不可
となり、あなたの営業力を発揮できず誰がやっても同じ結果となります。
顧客としては
いかに安く購入できるか?に神経を注ぎます。
② 購買主導で選定されている
企業によっては、直接開発担当者と関わることを良しとしない企業があります。
開発で決まった部品を購買が一元管理し、各商社に見積を出すというパターンです。
購買が見ているのは、
- 安いか
- 納期がいいか
- 在庫を持ってくれるのか
営業マンとして、どれもあなた自身でコントロールできない部分がウエイトを占めます。
結局のところ、
安く提供してくれる会社が正解となる構造です。
③ 複数社の横並び見積(相見積もり前提)
最初から相見積もりを前提としている場合は答えは”価格”しかありません。
- 最初から比較する前提
- 差別化をする時間が無い
顧客都合になりますが、この時点で
“価格競争の土俵に強制的に乗せられている”状態です。
④ 商社・EMSは“構造的に価格勝負になる”
商社やEMS(基板実装のみを請け負う企業)はそもそも電子回路設計者がいないことが大半です。
こういった企業はE/Uから既に決まっている部品リストから一番安く購入できるところを探すだけです。
- 技術的な提案
- 代替提案
などはそもそもできない構造となっています。
見られるのは”価格”のみとなります。
相見積もりで営業が勝てない理由
多くの営業は価格勝負になった時にこう考えます。
- もっと提案すればいい
- 関係性を作ればいい
- スピード対応すればいい
もちろん間違いではありません。
しかし先ほど紹介した条件が揃っている場合、
それらは顧客の評価項目に入っていません。
努力の方向性と評価軸がずれている状態です。
これが、
「頑張っているのに受注できない」正体です。
価格競争になってしまう大きな原因は、“初動の遅れ”にあります。
見積前に勝負が決まる営業の動きについては、こちらで詳しく解説しています。

それでも勝つための“現実的な戦い方”
どんな条件でも営業として受注を取る。利益を取るということから目を背けてはいけません。
ここからは条件や前提で戦う方法を見極めていきます。
① 勝ちにいく案件かを見極める
すべての案件を取りに行く必要はありません。
例えば
- 受注確度が低い
- 利益がほとんど出ない
- 次に繋がらない
このような場合は取りに行ったとしても消耗戦に巻き込まれて時間を消費します。
限られた時間の中で最大限の成果を出すためには”取りに行かない”ことが時に正解となります。
② あえて価格で取りにいく戦略
価格競争は必ずしも”悪”ではありません。
条件によっては無理をしてでも取りに行く案件もあります。
- 新規顧客の入口として取る
- 実績作りとして割り切る
- 後工程で利益を回収する
私の一例を紹介します。
新規であるユーザーに訪問し、見積もりをもらいました。
その時の条件が非常に厳しく、出せない単価ではないがそこまで無理をする必要があるかを説明する必要がある。
そんな見積です。
logipapa新規で訪問した○○から見積依頼をもらいました。
他商流で実績有の為、安価であれば切替えたいという内容です。



ターゲット単価はあるのか?



あります。
出せない単価ではないですが、通常の見積では安い部類に入ります。



今回のユーザーはポテンシャルもありますし、安ければ切替えてもらえる可能性もある為、多少の無理はしてでも見積もりをするべきだと考えます。



そうだな・・・
ここは入り込んでいくための戦略的価格でいこう
現在も新規ユーザーとはやり取りが続いており、購入までは至っておりませんが
仮にターゲットからかけ離れた単価を出していれば、単発見積で話が終わっていた可能性もあります。
受注につながらずとも、次につなげるという意味でも”価格競争”は時に必要な武器となります。
このように、価格で入るかどうかは「目的」を明確にすることが重要です。
③ 見切りラインを持つ
価格競争はここぞという時に使う事で意味を持ちます。
何度も見積もりを出せばそれだけ利益は減りますし、顧客からも”下げ幅”を持っているという印象を持たれて、
何度も価格交渉が入ります。
- 何回見積を出したら撤退するか
- どの条件なら辞退するか
自分の中でルールを決めて営業に臨むことが強い営業への一歩です。
価格競争を回避する営業の動き(相見積もり対策)
重要なのは”価格競争”に巻き込まれないことです。
そのための具体的方法を紹介します。
① 見積前に勝負を決める
見積の前段階=部品選定の段階に入り込み、顧客と一緒に選定を行う。
そうすることで、不要な見積もり競争から除外され、必然的にあなただけに見積が来ます。
見積は”確認作業”となり、価格競争から解放されます。
つまり、”選定の段階”に入ること。
これが最重要ミッションです。
実際の現場で使えるヒアリングや初動の動きは、体系的に理解しておくと再現性が高まります。
具体的なアクションを知りたい方はこちらもご覧ください。


② ヒアリングで競争軸をズラす
顧客が決めた製品に対して深堀を行い、他の基準軸を作るという方法です。
- なぜこの仕様なのか?
- 本当にこの条件は必要か?
- 他に困っていることはないか?
顧客にはそれぞれ社内マージンというものがあります。
※部品選定をする時にスペックぎりぎりを使用するのではなくある程度余裕を持たせる基準のこと
その基準が高すぎるためにオーバースペックの製品を選定していることが良くあります。
そんな時にメーカーへ顧客が必要としている条件をヒアリングし、
実際に使えるラインの製品を提案すると、価格を抑えることが出来ます。
顧客としてもメーカーのお墨付きがあるので、社内説得がしやすいという一石二鳥の方法です。
③ 技術・現場を巻き込む
先ほど紹介した、購買とだけ接触できない顧客は難しいですが、開発担当と会えるのであれば、
必ず開発担当を巻き込みましょう。
優先順位はこちらとなります。
- 開発責任者(部品選定権を持つ)/購買責任者(購入の責任あり)
- 開発担当(選定権は多少あり)
- 購買担当
ここに価値を感じてもらうと、
価格だけの勝負から解放されやすくなります。
④ 商社・EMSは日々の信頼関係で勝負
企業の構造上、判断基準が価格しかない為、いかに自分たちに有利な情報を取れるかが勝負となります。
- 競合の価格情報
- 実際の購入希望価格
- 落としどころ
共通するのは”ぶっちゃけた会話”が出来る関係を作ることが勝負のカギとなります。
まとめ
価格競争は営業の能力不足ではありません。
- 条件が揃えば必ず起きる
- 勝てない案件は存在する
その上で、
- 戦うのか
- 捨てるのか
- そもそも入らないのか
この判断が営業力です。
価格競争に巻き込まれ続ける営業と、そこから抜け出す営業。
その違いは、最初の一手で決まっています。
筆者について
電子部品業界で10年以上の営業経験。
電子部品商社で営業として勤務。
短納期対応・納期トラブルを多数経験。
現場で実際に使っている実務ベースのノウハウを発信しています。

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